プラセンタ注射の効果と副作用|更年期・疲れやすさに婦人科でできること
「なんとなく疲れが抜けない」「急に汗が出る」「気分の波が大きい」——40代半ばを過ぎたころから、こうした変化を感じる方が増えます。
はっきりした病気があるわけではない。でも以前と同じようには動けない。そんなとき、プラセンタ注射という選択肢を耳にしたことがあるかもしれません。
プラセンタ注射は、美容目的の施術として紹介されることが多く、「なんとなく体によさそう」というイメージで語られがちです。しかし実際には、更年期障害という明確な効能をもつ医薬品であり、同時に受ける前に知っておくべき制約もあります。
この記事では、プラセンタ注射とは何なのか、何に対して使われるのか、副作用と注意点、そして「一度受けると献血ができなくなる」という重要な点を整理します。あわせて、更年期の不調に対して婦人科で選べるほかの方法もお伝えします。「何を選ぶか」の判断材料としてお読みください。

プラセンタ注射とは
ヒト胎盤から作られた医薬品
プラセンタとは胎盤のことです。プラセンタ注射に使われるのは、ヒトの胎盤から有効成分を抽出して作られた医薬品です。
日本で医療用医薬品として承認されているプラセンタ製剤には、次のものがあります。
- メルスモン——更年期障害および乳汁分泌不全が承認された効能・効果です
- ラエンネック——慢性肝疾患における肝機能の改善が承認された効能・効果です
つまり、婦人科で更年期の症状に対して用いられるのは、メルスモンが本来の適応ということになります。
サプリメントとして販売されている「プラセンタ」とは、原料も製法もまったく異なります。市販のサプリメントの多くは豚や馬の胎盤由来であり、医薬品としてのプラセンタ注射とは別のものとお考えください。
保険が使える場合と、使えない場合
ここは混乱しやすい点です。
- 更年期障害の治療として、医師が必要と判断した場合——保険診療の対象となりえます
- 美容や疲労回復など、承認された効能以外の目的の場合——自費診療となります
同じ薬でも、何のために使うかで扱いが変わります。「疲れが取れるらしいから」という理由での希望は自費診療にあたります。ご自身がどちらに当てはまるかは、診察のうえで判断することになりますので、症状を率直にお話しください。
なお、自費診療の場合の費用は医療機関によって異なります。回数を重ねる使い方が一般的なため、1回あたりの金額だけでなく、継続した場合の総額で考えることをおすすめします。
期待される効果と、その限界

更年期障害に対して
メルスモンは更年期障害に対して承認されている医薬品です。更年期障害とは、閉経前後の女性ホルモンの変動によって起こる、ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗、冷え、疲労感、いらいら、不眠、気分の落ち込みなどの症状が、日常生活に支障をきたす状態を指します。
プラセンタ注射がこれらの症状の緩和に用いられてきた歴史は長く、承認されて長期間使用されてきた薬剤です。
過度な期待は禁物です
一方で、正直にお伝えしておきたいことがあります。
プラセンタ注射は、「打てば必ず楽になる」という薬ではありません。 効果の感じ方には個人差が大きく、はっきり変化を感じる方もいれば、あまり実感が得られない方もいらっしゃいます。
また、「アンチエイジング」「美肌」「疲労回復」といった効果は、承認された効能・効果には含まれていません。そうした目的で紹介されることがありますが、それらは承認の範囲外の使い方であり、効果を保証できるものではありません。
婦人科としてお伝えしたいのは、更年期の不調に対する治療の選択肢はプラセンタ注射だけではないということです。症状によっては、ほかの方法のほうが効果が期待できる場合があります(後述します)。
使用の頻度
一般的には、1〜2週間に1回程度から始め、症状に応じて調整していく使い方がされます。1回で完結する治療ではなく、継続して様子を見ていくタイプの治療です。
このため、通院の負担と費用を含めて、続けられるかどうかを含めて検討する必要があります。
副作用と、受ける前に知っておくこと
起こりうる副作用
比較的よく知られているものとして、次のようなものがあります。
- 注射した部位の痛み・赤み・しこり
- 発熱
- 発疹・かゆみ
- 悪寒、倦怠感
- まれに、ショック・アナフィラキシー様症状
注射後に強いかゆみ、じんましん、息苦しさ、めまいなどが出た場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
また、女性ホルモン様の作用に関連した症状(乳房の張りなど)が出ることがあります。気になる変化があれば、次回の受診を待たずにご相談ください。
必ず知っておいてほしいこと|献血ができなくなります
これは、受ける前に必ず知っておいていただきたい点です。
ヒト胎盤由来のプラセンタ製剤を投与された方は、その後、献血ができなくなります。
これは厚生労働省の指導に基づく取り扱いで、一度でも投与を受けると、その後は献血ができません。期間を空ければ再開できる、というものではありません。
理由は、理論上の感染リスクを完全には否定できないことにあります。ヒトの組織を原料とする製剤である以上、現在の製造工程で安全性を高めていても、未知の感染因子のリスクをゼロと断言することはできない——という考え方から、予防的な措置がとられています。
実際に健康被害が報告されているという意味ではありません。ただ、「知らずに受けて、後から献血できないと知った」という状況は避けたいところです。ご家族に輸血が必要な方がいる場合や、献血を続けている方にとっては、判断に関わる情報だと思います。
この点を説明されないまま施術を勧められた場合は、いったん立ち止まって確認することをおすすめします。
受けられない場合・注意が必要な場合
- 妊娠中・授乳中——安全性が確立されていないため、慎重な判断が必要です。妊娠の可能性がある場合は必ずお伝えください
- 薬剤に対するアレルギーがある方
- その他、持病や服用中の薬がある方——診察時にお伝えください
更年期の不調に対して、ほかにできること

プラセンタ注射は選択肢のひとつですが、それが最初の選択肢とは限りません。更年期の症状に対して、婦人科では次のような方法を検討します。
ホルモン補充療法(HRT)
減少した女性ホルモンを補う治療です。とくにほてり・のぼせ・発汗といった血管運動神経症状に対しては、効果が期待できる治療法として位置づけられています。
飲み薬、貼り薬、塗り薬など複数の形があり、生活に合わせて選べます。ただし、過去の病歴によっては使用できない場合があるため、適応の判断には診察が必要です。「ホルモンの薬は怖い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、メリットとリスクを説明したうえで、一緒に判断できます。
漢方薬
体質や症状の出方に合わせて選択します。複数の症状が混在している場合や、HRTが使いにくい場合に選ばれることがあります。
向精神薬など
気分の落ち込みや不安、不眠が中心の場合には、そちらに対する治療が有効なことがあります。
生活面の調整
睡眠、運動、食事といった基盤の部分も、症状の感じ方に影響します。ただし、「生活習慣を整えれば治る」という単純な話ではありません。生活の改善だけを求められて我慢し続ける必要はなく、治療という選択肢があります。
大切なのは「その症状に合った方法を選ぶこと」
更年期の不調といっても、何がいちばんつらいかは人によって違います。ほてりが中心なのか、気分の落ち込みが中心なのか、疲労感なのか。それによって、適した方法は変わります。
「プラセンタ注射を受けたい」というご相談でも、まずは症状を伺わせてください。 結果としてほかの方法をご提案することもありますし、組み合わせを検討することもあります。
受診の目安|見逃してはいけない症状
更年期の症状と思っていたものが、別の病気によるものであることがあります。次のような場合は、更年期のせいと決めつけずに受診してください。
- 不正出血がある——とくに閉経後の出血は、少量でも必ず受診が必要です。子宮体がんなどの可能性を確認する必要があります
- 極端な疲労感、体重の変化、動悸——甲状腺の病気や貧血の可能性があります
- 強い落ち込みが2週間以上続く、何をしても楽しめない——うつ病の可能性があり、その場合は適切な治療が必要です
- 月経の量が急に増えた、期間が長くなった——子宮筋腫などの可能性があります
プラセンタ注射を含め、症状を和らげる治療を始める前に、原因の確認をしておくことが大切です。 症状だけを抑えて経過を見ていると、背景にある病気の発見が遅れることがあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
A. 個人差が大きく、一概には言えません。数回で変化を感じる方もいれば、実感が得られない方もいらっしゃいます。一定期間続けても変化がない場合は、ほかの方法を検討するのが現実的です。
Q. サプリメントのプラセンタとは違うのですか?
A. まったく別のものです。市販のサプリメントは主に豚や馬の胎盤由来で、医薬品としての承認を受けたものではありません。効能・効果が承認されているのは、医療機関で使用する注射剤のほうです。
Q. 一度始めたら、やめられなくなりますか?
A. 依存性のある薬ではありません。中止による離脱症状もありません。必要がなくなれば、やめて差し支えありません。
Q. 美容目的で受けたいのですが
A. 承認された効能・効果には美容に関するものは含まれておらず、その場合は自費診療となります。また、効果を保証できるものではないことをご理解ください。そのうえで、献血ができなくなる点は必ず考慮していただきたいと思います。
Q. 男性でも受けられますか?
A. メルスモンの効能・効果は更年期障害・乳汁分泌不全であり、承認された適応の範囲内かどうかは診察で判断します。
Q. 保険が使えるかどうかは、どう決まりますか?
A. 診察のうえで、承認された効能・効果に該当する状態かを医師が判断します。「保険で受けたい」というご希望だけで決まるものではありませんので、症状を率直にお話しください。
Q. 妊娠を考えていますが、受けても大丈夫ですか?
A. 妊娠中・授乳中の安全性は確立されていません。妊娠の可能性がある場合、妊娠を計画している場合は必ずお伝えください。
まとめ:選択肢のひとつとして、正しく知ったうえで
プラセンタ注射のポイントを整理します。
- ヒト胎盤由来の医薬品。メルスモンは更年期障害・乳汁分泌不全が承認された効能・効果
- 更年期障害の治療としては保険診療の対象となりえるが、美容や疲労回復目的は自費診療
- 効果には個人差が大きく、「必ず楽になる」薬ではない。アンチエイジング等は承認された効能ではない
- 副作用として注射部位の反応、発熱、発疹など。まれにアナフィラキシー様症状
- 一度でも投与を受けると、その後は献血ができなくなる。これは必ず知っておくべき点
- 更年期の不調にはホルモン補充療法(HRT)・漢方薬などほかの選択肢もある。症状に合った方法を選ぶことが大切
- 閉経後の不正出血、極端な疲労、2週間以上続く落ち込みは、更年期のせいと決めつけず受診を
「疲れやすいのは年齢のせい」と我慢されている方は、とても多くいらっしゃいます。ですが、更年期の不調は治療できる症状です。そして治療の方法はひとつではありません。何がいちばんつらいかを教えていただければ、それに合った方法を一緒に考えられます。
名古屋市緑区の徳重ウイメンズケアクリニックでは、プラセンタ注射・点滴療法のご案内をしています。詳しくはプラセンタ注射・点滴療法のご案内をご覧ください。更年期の不調についてのご相談も、あわせてお受けしています。