コラム

Column

妊娠中のインフルエンザ予防接種は受けていい?不活化ワクチンの安全性と接種時期

はじめに

「妊娠中に注射を打って、赤ちゃんに影響はないの?」「薬はできるだけ避けたいのに、ワクチンは受けていいの?」。毎年10月、インフルエンザの予防接種が始まる時期になると、妊婦健診でこうしたご質問をよくいただきます。

妊娠中に薬や注射をためらうのは、赤ちゃんを思うからこその自然な気持ちです。ただ、インフルエンザに関しては、受けないことのほうがリスクになることが、国内外の調査でわかってきました。

この記事では、なぜ妊娠中はインフルエンザに注意が必要なのか、インフルエンザワクチンが「不活化ワクチン」であるとはどういうことか、生まれてくる赤ちゃんにどんな意味があるのか、そして接種の時期・回数・費用・自治体の助成まで、順を追って整理します。

この記事のポイント

  • 妊娠中はインフルエンザが重症化しやすい
  • 注射のインフルエンザワクチンは不活化ワクチン。妊娠のどの週数でも接種できる
  • お母さんの抗体が赤ちゃんに移行し、生後6か月までの赤ちゃんを守る
  • 接種の目安は10月〜12月中旬。13歳以上は1回、13歳未満は2回
妊娠中のインフルエンザ予防接種について産婦人科で相談する妊婦のイメージ

妊娠中にインフルエンザにかかると、なぜ重症化しやすいのか

妊娠中の体は、赤ちゃんを育てるために大きく変化しています。

  • 免疫のはたらきが変化する:お腹の赤ちゃんを異物として攻撃しないよう、免疫の反応がやわらげられています。その分、ウイルスへの抵抗力が下がりやすくなります
  • 心臓と肺に負担がかかっている:大きくなった子宮に横隔膜が押し上げられ、肺の容量が小さくなります。血液の量も増え、心臓は妊娠前より多く働いています
  • 発熱や脱水の影響を受けやすい:高熱や食事がとれない状態が続くと、赤ちゃんの環境にも影響します

こうした理由から、妊娠中は同じ年代の妊娠していない女性と比べて、インフルエンザにかかったときに肺炎などを起こして入院が必要になる割合が高いことが知られています。とくに妊娠後期ほどその傾向が強くなります。

「若くて健康だから大丈夫」とは言い切れないのが、妊娠中のインフルエンザです。

インフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」。妊娠中どの週数でも接種できます

不活化ワクチンと生ワクチンの違いを示す図解(妊娠中に接種できるのは不活化ワクチン)

ワクチンには大きく分けて2種類あります。

不活化ワクチンと生ワクチンの違い

  • 不活化ワクチン:ウイルスを処理して感染する力をなくし、免疫をつくるのに必要な成分だけを取り出したもの。体の中でウイルスが増えることはありません
  • 生ワクチン:毒性を弱めた生きたウイルスを使うもの。体の中でわずかに増えて免疫をつくるため、妊娠中は接種できません(風しん・麻しん・水痘などが該当します)

日本で注射によって接種されているインフルエンザワクチンは、すべて不活化ワクチンです。ウイルスそのものが体内で増えることがないため、お腹の赤ちゃんに感染するという心配はありません。

なお、風しんなどの生ワクチンは妊娠前に済ませておくことが大切です。これから妊娠を考えている方は、妊活の始め方の記事もあわせてご覧ください。

妊娠初期でも、後期でも接種できます

「安定期に入ってから」と考える方が多いのですが、インフルエンザの不活化ワクチンは妊娠のどの時期でも接種が可能です。妊娠初期に接種した場合も、赤ちゃんの先天異常が増えるという結果は、これまでの国内外の調査で示されていません。

日本産科婦人科学会も、妊娠中の女性へのインフルエンザワクチン接種を推奨しており、厚生労働省も「妊娠全期間を通じて接種可能」との見解を示しています。

注意:鼻から吸うタイプは生ワクチンです

近年、注射ではなく鼻に噴霧するタイプのインフルエンザワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)も使われるようになりました。こちらは名前のとおり生ワクチンで、対象は2歳以上19歳未満の方です。妊娠中の方は接種できません。

妊娠中の方がインフルエンザワクチンを受ける場合は、必ず注射の不活化ワクチンを選んでください。

生まれてくる赤ちゃんを守る、という意味

妊娠中の接種には、お母さん自身を守るだけでなく、生まれてくる赤ちゃんを守るというもうひとつの大きな意味があります。

生後6か月までの赤ちゃんは、ワクチンを打てません

インフルエンザワクチンは生後6か月から接種できます。裏を返せば、生まれてから半年間、赤ちゃんは自分ではワクチンで身を守ることができません。そして、この時期の赤ちゃんはインフルエンザにかかると重症化しやすいことがわかっています。

お母さんの抗体が、胎盤を通じて赤ちゃんに渡ります

妊娠中にお母さんがワクチンを接種すると、体の中でつくられた抗体が胎盤を通って赤ちゃんに移行します。この「移行抗体」が、生後数か月のあいだ赤ちゃんをインフルエンザから守るはたらきをすることが、国内外の研究で報告されています。

つまり、妊娠中の接種はお母さんと赤ちゃんの2人分の予防になります。冬に出産を控えている方、生まれたばかりの赤ちゃんと冬を迎える方には、とくにおすすめしたい理由です。

授乳中も接種できます

産後、授乳中の方もインフルエンザワクチンは接種できます。不活化ワクチンですので、母乳を通じて赤ちゃんに悪い影響が出ることはありません。産後は体力が落ち、育児で睡眠も不足しがちです。お母さんが倒れないためにも、産後の接種もぜひご検討ください。

なお、授乳中の発熱はインフルエンザだけでなく乳腺炎が原因のこともあります。産後の体調に不安がある方は、産後ケア入院の記事もあわせてご覧ください。

同居しているご家族全員の接種をおすすめする理由

妊婦さんや生まれたばかりの赤ちゃんを守るうえで、本人の接種と同じくらい大切なのが、まわりの人の接種です。

  • 赤ちゃんは家族からうつることがほとんど:生後6か月未満の赤ちゃんは自分では接種できないため、まわりの大人・きょうだいが感染源にならないことが最大の予防になります
  • 上のお子さんは保育園・学校でもらってきやすい:家庭内にウイルスが持ち込まれる入り口になりがちです
  • パートナーや同居のご両親も同様:「自分は毎年かからないから」という方ほど、無症状に近い形で持ち込むことがあります

このように、赤ちゃんを囲む家族全員がワクチンで守りを固める考え方は、赤ちゃんを繭(まゆ)で包むことにたとえて「コクーニング」と呼ばれています。家族の予定を合わせて、同じ日に接種してしまうのが続けやすいコツです。

「水銀の防腐剤」が心配な方へ

インフルエンザワクチンには、複数回使う瓶(バイアル)の中で細菌が増えないよう、チメロサールという保存剤が微量に添加されている製品があります。これがエチル水銀という物質に由来するため、「水銀が入っている」と心配される方がいらっしゃいます。

まず前提として、チメロサール入りのワクチンについても、発達への影響などの関連は、これまでの大規模な疫学研究では示されていません。

そのうえで、注射器にあらかじめ1回分が充填された製剤(プレフィルドシリンジ)は保存剤を使う必要がないため、チメロサール無添加となっています。妊娠中・授乳中の方やお子さんには、こうした無添加のワクチンを選ぶことができます。心配な方は、接種を受ける医療機関に「無添加のワクチンはありますか」と確認してみてください。

接種の時期・回数・受けられない場合

インフルエンザワクチンの接種時期と効果の持続期間を示すカレンダー図解

いつ受ける?10月から12月中旬までが目安

ワクチンの効果は接種から約2週間後に現れ、およそ5か月続くとされています。国内のインフルエンザは例年12月から3月にかけて流行し、1月から2月にピークを迎えることが多いため、10月から12月中旬までに接種を済ませておくのが一般的な目安です。

ただし、この目安を過ぎたからといって意味がなくなるわけではありません。流行が始まってからでも、接種すれば2週間後からは効果が期待できます。「もう遅いかな」と思わず、ご相談ください。

何回打つ?13歳未満は2回、13歳以上は1回

  • 13歳以上の方(妊婦さん・大人を含む):1回
  • 13歳未満のお子さん:2回(1回目から2〜4週間あけて2回目を接種。可能であれば4週間程度あけると効果が高いとされています)

13歳未満のお子さんが2回必要なのは、1回では十分な免疫がつきにくいためです。上のお子さんと一緒に受ける場合は、2回目の予定まで含めてスケジュールを立ててください。

接種を受けられない・延期したほうがよい場合

次のような場合は、当日の接種を見合わせます。

  • 明らかな発熱がある(通常37.5℃以上)
  • 重い急性の病気にかかっている
  • 過去にインフルエンザワクチンでアナフィラキシー(急激なアレルギー反応)を起こしたことがある
  • 過去にインフルエンザワクチンの接種後2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギーを疑う症状が出たことがある方は、事前にご相談ください

卵アレルギーの方について。インフルエンザワクチンは製造工程で鶏卵を使うため、ごく微量の卵の成分が含まれることがあります。ただし、卵を食べて軽い症状が出る程度であれば接種できることがほとんどです。卵で強いアレルギー反応を起こしたことがある方は、事前に必ずお伝えください。

副反応について

接種した部位の赤み・腫れ・痛みは、接種を受けた方の10〜20%程度に起こり、通常2〜3日で自然に治まります。発熱や体のだるさが出ることもありますが、こちらも数日で落ち着くのが一般的です。まれに強いアレルギー反応が起こることがあるため、接種後しばらくは院内でお過ごしいただきます。

妊娠中に接種した場合も、副反応の種類や頻度は妊娠していない方と変わらないとされています。

費用と自治体の助成

インフルエンザの予防接種は、65歳以上の方などの定期接種を除き、公的医療保険の対象外(自費)です。費用は医療機関ごとに定められています。

名古屋市にお住まいの方:小6・中3・高3は無料

名古屋市では、子どものインフルエンザ予防接種費用の助成事業として、令和8年度(2026年度)は次の方の接種費用を全額助成(無料)しています。

  • 小学校6年生相当(令和8年度中に12歳になる方):2回まで
  • 中学校3年生相当(同15歳になる方)・高校3年生相当(同18歳になる方):1回
  • 実施期間:令和8年10月1日〜令和9年1月31日
  • 対象の方には9月中旬ごろからクーポン券が郵送されます
  • 名古屋市の指定医療機関で、必ずクーポン券を持参して接種してください。クーポン券がない場合や指定医療機関以外で接種した場合は、全額自己負担になります

詳細は名古屋市:子どものインフルエンザ予防接種費用の助成事業をご確認ください。

豊明市・東郷町にお住まいの方

  • 豊明市は中学3年生相当の方を対象に、接種費用の一部(2,000円)を助成しています。ただし豊明市内の実施医療機関で接種した場合に限られます
  • 東郷町は中学3年生・高校3年生の方を対象に、東郷町内の医療機関での接種に補助を行っています

いずれも市外・町外の医療機関での接種は助成の対象外となりますので、助成を利用したい場合は、お住まいの市町内の医療機関をご利用ください。制度の詳細は各市町の窓口・ホームページでご確認ください。

健康保険組合の補助券

ご加入の健康保険組合によっては、被保険者・ご家族向けにインフルエンザ予防接種の補助券や補助制度を設けています。補助券をお持ちの方は、接種当日に医療機関の窓口へお出しください。

徳重ウイメンズケアクリニックの場合

当院では2026年10月からインフルエンザ予防接種を開始しています。3〜18歳の方、妊娠中・授乳中の方には、原則として水銀の防腐剤(チメロサール)無添加のワクチンを使用します。妊婦健診・産後健診の際に一緒に接種することもできますので、受付でお申し出ください。

対象 1回目 2回目
大人(13歳以上) 4,400円 ―
お子さん(3歳以上13歳未満) 4,400円 3,300円
お子さん(3歳未満) 3,500円 2,500円

※料金は税込です。13歳未満の方は2回接種です。

インフルエンザのみの接種をご希望の方は、次の土曜日13時30分からの予約制の集団接種でお受けしています。
10月10日(土)・10月24日(土)・11月14日(土)・11月21日(土)
土曜日の予防接種のみのご予約はお電話(052-877-1333)で承ります。

名古屋市の助成クーポンをお持ちの方は、必ずクーポン券を持参のうえご来院ください。健康保険組合のインフルエンザ予防接種補助券もご利用いただけます。

インフルエンザ予防接種の予診票(PDF)をダウンロードし、ご自宅で記入のうえお持ちいただくと受付がスムーズです。詳しくは任意予防接種のご案内をご覧ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 妊娠初期(妊娠12週未満)でも受けて大丈夫ですか?

A. 受けられます。インフルエンザの不活化ワクチンは妊娠のどの時期でも接種可能で、妊娠初期に接種しても先天異常が増えるという報告はありません。むしろ流行期に妊娠初期を迎える方は、早めの接種をおすすめします。

Q. 妊娠中にインフルエンザにかかってしまったら、どうすればいいですか?

A. 38℃以上の急な発熱、関節の痛み、強いだるさなどがあれば、様子を見ずに早めに医療機関へ連絡してください。妊娠中でも使用できる抗インフルエンザ薬があり、発症から早い段階で治療を始めるほど効果的です。受診前にお電話をいただければ、他の妊婦さんへの感染を防ぐための動線をご案内します。

Q. 新型コロナワクチンや百日せきワクチンと同時に受けられますか?

A. インフルエンザワクチンは不活化ワクチンなので、他の不活化ワクチンとの接種間隔に制限はなく、医師が必要と認めた場合は同時接種も可能です。妊娠中に接種が推奨されるワクチンにはインフルエンザのほか、新型コロナ、百日せきがあります。スケジュールは妊婦健診の際にご相談ください。

Q. 去年打ったので、今年は打たなくても大丈夫ですか?

A. 毎年の接種をおすすめします。ワクチンの効果は約5か月で薄れていくうえ、インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変化しており、ワクチンの中身もその年の流行予測に合わせて毎年つくり直されているためです。

Q. 家族がインフルエンザにかかりました。妊娠中ですが予防のためにできることは?

A. 可能であれば部屋を分け、看病はできるだけ他の家族に任せてください。こまめな手洗いとマスクの着用も有効です。妊娠中の方には、状況によって発症予防のための抗インフルエンザ薬を使えることがありますので、家族が発症した時点で早めにご相談ください。

Q. 上の子と一緒に受けたいのですが、子どもの2回目はいつ受ければいいですか?

A. 1回目から2〜4週間あけて2回目を接種します。1回目を10月中に受ければ、11月中に2回目を終えることができ、流行前に免疫を整えやすくなります。当院では土曜日の集団接種日を4回設けていますので、1回目と2回目を組み合わせてご予約いただけます。

まとめ:お母さんと赤ちゃん、2人分の予防を

妊娠中のインフルエンザ予防接種のポイントを整理します。

  • 妊娠中はインフルエンザが重症化しやすい。「若くて健康だから」と油断できない
  • インフルエンザの注射ワクチンは不活化ワクチンで、妊娠のどの週数でも接種できる。学会も接種を推奨している
  • お母さんの抗体が赤ちゃんに移行し、ワクチンを打てない生後6か月までの赤ちゃんを守る
  • 授乳中も接種できる。家族全員で受けて、赤ちゃんを囲む守りを固める
  • 妊娠中・授乳中の方やお子さんには水銀の防腐剤無添加のワクチンを選べる
  • 10月〜12月中旬が目安。13歳未満は2回、13歳以上は1回
  • 名古屋市は小6(2回)・中3・高3(1回)が無料。クーポン券を必ず持参する

「赤ちゃんのために我慢する」のではなく、「赤ちゃんのために受ける」。インフルエンザワクチンは、妊娠中にできる数少ない、そして確かな予防のひとつです。

名古屋市緑区の徳重ウイメンズケアクリニックでは、妊娠中・授乳中の方はもちろん、同居のご家族・お子さんのインフルエンザ予防接種もお受けしています。妊婦健診のついでに、あるいは土曜日の集団接種で、ご家族そろってどうぞ。日程や料金の最新情報はインフルエンザ予防接種のお知らせと任意予防接種のご案内をご確認ください。ご不明な点はお気軽にお電話(052-877-1333)でお問い合わせください。

Hours & Access

診療時間・アクセス

午後の診療が更にご利用頂きやすくなりました。
皆様のご来院心よりお待ちしております。

診療時間・外来担当表

祝日はお休みです

月火水木金土日
9:00〜12:30 院長吉田 院長 院長 院長大谷 院長吉田 院長 休診
14:00〜16:00 吉田 休診 休診 大谷 吉田 第2・第4土曜
藤田医科大学病院医師
休診
16:00〜18:30 院長 院長 休診 院長 院長 休診 休診
18:30〜19:00 休診 院長 休診 休診 院長 休診 休診

男性医師 女性医師

※予約優先 ※最終受付は終了時間の15分前となります

〒458-0815
愛知県名古屋市緑区徳重2丁目1810

徳重駅(地下鉄桜通線)2番出口より徒歩約8分。
改札を出て左手の通りを直進し、「鶴が沢一丁目」交差点を右折。さらに0.6㎞ほど進むと「徳重ウイメンズケアクリニック」がございます。