コラム

Column

クラミジアは自覚症状が出にくい|性感染症検査の内容・費用・受けるタイミング

性感染症検査について産婦人科で相談する女性のイメージ

はじめに

「症状がないから、たぶん大丈夫」——性感染症について、多くの方がそう考えています。

けれど性器クラミジア感染症に限っては、この考え方が通用しません。女性の場合、感染していても自覚症状がはっきり出ないことが多いという特徴があるためです。おりものが少し増える、下腹部がなんとなく重い——その程度の変化しかないことも珍しくなく、気づかないまま時間が過ぎていきます。

そして厄介なのは、気づかないうちに体の奥へ広がっていくことです。子宮の入り口から卵管へと炎症が進むと、卵管が詰まったり動きが悪くなったりして、将来の妊娠に影響することがあります。実際、不妊の検査を受けて初めて過去の感染がわかる、というケースがあります。

この記事では、クラミジアがどんな感染症なのか、検査はどのように受けるのか、いつ受けるとよいのか、費用はどう考えればよいのかを整理します。心当たりの有無にかかわらず、一度も検査を受けたことがない方には読んでいただきたい内容です。

性器クラミジア感染症とは

国内でもっとも報告数の多い性感染症

性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスという微生物による感染症です。厚生労働省の感染症発生動向調査において、国内でもっとも報告数が多い性感染症とされています。

2024年の報告では、20代がもっとも多く、次いで30代という分布でした。10代の報告も一定数あり、決して特定の年代だけの話ではありません。

なお、この統計には注意点があります。クラミジア感染症は定点把握——つまり指定された医療機関からの報告を集計する方式のため、実際の感染者数は報告数より多いと考えられています。自覚症状が出にくく受診に至らないケースが多いことを考えると、その差は小さくないはずです。

感染の経路

性行為(腟性交・口腔性交・肛門性交を含む)によって感染します。コンドームを使わない性交渉が主な経路ですが、口腔咽頭への感染もあり、喉に感染していても症状がないことが多いとされています。

「パートナーが一人だから大丈夫」とは言い切れません。過去のパートナーからの感染が、症状のないまま続いていることがあるためです。

女性に出やすい症状(出ないことも多い)

症状が出る場合、次のようなものがあります。

  • おりものの量が増える、色や性状が変わる
  • 不正出血(月経ではないタイミングの出血)、性交後の出血
  • 下腹部の鈍い痛み、重い感じ
  • 排尿時の違和感

ただし繰り返しになりますが、これらがまったく出ないことのほうが多いとされています。「症状がない=感染していない」という判断はできません。

放置するとどうなるのか

クラミジア感染が子宮頸部から卵管へ広がる経路を示す図解

ここが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

炎症が奥へ広がっていく

感染は多くの場合、子宮の入り口(子宮頸管)から始まります。放置されると、そこから子宮内部、卵管、さらには腹腔内へと炎症が広がっていきます。

卵管に炎症が及ぶと(卵管炎)、卵管の内側の粘膜が傷つき、通り道が狭くなったり、卵管の動きが悪くなったりします。卵管は、卵子と精子が出会い、受精卵が子宮へ運ばれる通路です。ここが損なわれると、次のような影響が生じます。

  • 卵管性不妊——卵子と精子が出会えない、受精卵が子宮に到達できない
  • 異所性妊娠(子宮外妊娠)——受精卵が卵管などに着床してしまう。放置すると命に関わる状態です
  • 骨盤内炎症性疾患(PID)——骨盤内に炎症が広がった状態。強い下腹部痛や発熱を伴うことがあります
  • 慢性的な下腹部痛——炎症後の癒着によるもの

「気づいたときには過ぎていた」という順番

重要なのは、この過程の多くが症状のないまま進むということです。だからこそ、不妊治療の検査で「過去に感染した形跡がある」と指摘されて初めて知る、という順番になりやすいのです。

一度損なわれた卵管の機能は、感染を治療しても元通りにはなりません。だからこそ、症状の有無にかかわらず検査を受ける意味があります。

すぐに受診が必要なサイン

発熱を伴う強い下腹部痛がある場合は、骨盤内炎症性疾患が進行している可能性があります。様子を見ずに受診してください。また、妊娠の可能性がある状態で片側の強い下腹部痛やめまい・立ちくらみを伴う場合は、異所性妊娠の可能性があり、緊急の対応が必要です。

妊娠中の感染は赤ちゃんにも関わる

妊娠中にクラミジアに感染していると、出産の際に産道で赤ちゃんに感染する(産道感染)ことがあります。新生児に結膜炎や肺炎を起こす可能性があるため、妊婦健診ではクラミジアの検査が標準的に行われます。

治療によって出産までに感染を治しておくことで、こうしたリスクを避けられます。妊婦健診で検査があるのは、このためです。

検査の内容と受け方

産婦人科で性感染症検査を受ける環境のイメージ

検査の方法

女性の場合、子宮頸管(子宮の入り口)から検体を採取する方法が基本です。綿棒のような器具で分泌物をぬぐい取ります。

  • 所要時間——採取自体は数十秒程度です
  • 痛み——子宮頸がん検診と同様の内診台での検査で、強い痛みを伴うものではありません。緊張すると痛みを感じやすくなるので、力を抜いていただくとより楽です
  • 結果が出るまで——検査方法によりますが、数日程度が一般的です

尿検査で調べる方法もありますが、女性では子宮頸管からの採取のほうが検出精度が高いとされています。また、口腔性交の機会があった場合は、喉(咽頭)の検査を追加することがあります。喉の感染は子宮頸管の検査では見つかりません。

他の性感染症も一緒に調べる意味

クラミジアに感染している場合、他の性感染症にも同時に感染している可能性があります。とくに淋菌感染症は合併しやすいことが知られています。

そのため実際の診療では、次のような組み合わせで検査することがよくあります。

  • クラミジア
  • 淋菌
  • 梅毒(血液検査)
  • HIV(血液検査)
  • B型肝炎・C型肝炎(血液検査)

どこまで調べるかは、状況とご希望によって相談して決めます。「全部調べたい」と伝えていただいてかまいません。

いつ受けるとよいか

タイミングについて、よくいただく質問にお答えします。

感染の機会から時間をおく必要があります。 感染してすぐは検査で検出できないことがあるため、心当たりのある性交渉から1〜2週間程度あけてから受けるのが一般的です。ただし症状がある場合は、時期を待たずに受診してください。

そのうえで、次のようなタイミングでの検査をおすすめします。

  • 妊娠を考え始めたとき——妊娠前に治療しておくことで、卵管への影響と産道感染の両方を避けられます。妊活の始め方の記事でも触れています
  • 新しいパートナーができたとき——お互いに調べておくことが、双方を守ります
  • パートナーが感染を指摘されたとき——症状がなくても必ず検査を
  • 不正出血やおりものの変化が続くとき
  • 一度も検査を受けたことがないとき——これがいちばん多い理由かもしれません

費用の考え方

費用は、症状があるかどうかで扱いが変わります。

  • 症状がある場合——診察のうえで検査が必要と判断されれば、保険診療の対象となります
  • 症状がなく、確認のために受ける場合——自費診療となるのが一般的です

自費の場合の金額は、調べる項目数や医療機関によって異なります。受診前に電話などで確認しておくと安心です。

名古屋市の無料・匿名検査

名古屋市では、HIV・梅毒・性器クラミジアの検査を無料・匿名で受けられます。各区の保健センターで実施されており、平日日中の通常検査は予約不要です(即日検査や休日検査は予約制で、検査項目が異なる場合があります)。

実施日・受付時間・検査項目は会場によって異なりますので、最新の日程はなごやHIV・性感染症ガイド(名古屋市)でご確認ください。

「症状はないけれど一度確認しておきたい」という方にとって、費用の心配なく受けられる選択肢です。ただし症状がある場合は、検査だけでなく治療が必要になりますので、医療機関の受診をおすすめします。

感染がわかったら

治療は薬で完了します

クラミジア感染症の治療は、抗菌薬の内服で行います。薬の種類によって、1回の服用で完了するものと、数日間続けて飲むものがあります。医師の指示どおりに最後まで飲みきることが大切です。症状がないからと途中でやめると、治りきらないことがあります。

治療後には、きちんと治ったかを確認する検査を行うことがあります。この確認も含めて治療、と考えてください。

パートナーの治療が不可欠です

ここは強調させてください。ご本人だけが治療しても、パートナーが感染したままでは再感染します。これを「ピンポン感染」と呼びます。

  • パートナーにも検査と治療を受けてもらう
  • 治療が完了するまでは性交渉を控えるか、コンドームを使用する

パートナーに伝えるのは気が重い場面かもしれません。ただ、これは責める・責められる話ではなく、二人の健康と、将来の妊娠に関わる問題です。「産婦人科で検査を受けたら見つかったので、あなたも受けてほしい」と伝えていただければ十分です。伝え方に迷う場合は、診察のときにご相談ください。

予防について

  • コンドームの使用——感染リスクを下げるもっとも実効性のある方法です。ただし接触部位すべてを覆えるわけではないため、リスクをゼロにはできません
  • 定期的な検査——症状に頼らない唯一の方法です

よくあるご質問(FAQ)

Q. パートナーは私だけです。それでも検査は必要ですか?

A. 現在の関係だけでは判断できません。クラミジアは症状のないまま長期間持続することがあるため、過去の感染が続いている可能性があります。一度も検査を受けたことがなければ、確認しておく意味は十分にあります。

Q. 検査は誰かに知られませんか?

A. 医療機関には守秘義務があります。ご家族への連絡が必要な検査ではありません。保険証を使う場合、加入している健康保険組合に受診の記録が残る仕組みがあるため、その点が気になる場合は自費での受診も選べます。受付や診察で率直にご相談ください。

Q. 生理中でも検査できますか?

A. 月経中は検体の採取が難しく、正確な結果が得られにくいため、月経が終わってからの受診をおすすめします。ただし強い症状がある場合は、時期を問わず受診してください。

Q. 治ったあと、また感染することはありますか?

A. あります。クラミジアは一度治療しても免疫がつくわけではないため、再度感染する可能性があります。パートナーの治療と、その後の予防が重要になります。

Q. 不妊治療の前に調べたほうがよいですか?

A. はい。妊娠を考える段階での検査は非常に意味があります。感染がある状態で妊娠すると産道感染のリスクがあり、また卵管の状態を知るうえでも重要な情報になります。詳しくは妊活の始め方をご覧ください。

Q. 妊娠中に感染がわかったらどうなりますか?

A. 妊娠中でも使用できる抗菌薬があります。自己判断で市販薬を使ったり、放置したりせず、必ず主治医の指示に従ってください。出産までに治療を完了させることで、赤ちゃんへの産道感染を防げます。

Q. 婦人科に行くのが恥ずかしいのですが

A. 産婦人科にとって、性感染症の検査はごく日常的な診療のひとつです。責めたり、詮索したりすることはありません。「検査を受けたい」とだけ伝えていただければ大丈夫です。

まとめ:症状に頼らず、検査で確認する

性器クラミジア感染症のポイントを整理します。

  • 国内でもっとも報告数の多い性感染症。20代・30代に多いが、年代を問わず起こる
  • 女性は自覚症状が出にくい。「症状がない=感染していない」ではない
  • 放置すると炎症が卵管まで広がり、卵管性不妊・異所性妊娠・骨盤内炎症性疾患につながることがある
  • 妊娠中の感染は産道感染で赤ちゃんに影響するため、妊婦健診で検査が行われる
  • 検査は子宮頸管からの採取が基本。数十秒で終わる。他の性感染症とあわせて調べることも多い
  • 症状があれば保険診療、確認目的なら自費が一般的。自治体の無料検査という選択肢もある
  • 治療は抗菌薬の内服。ただしパートナーの治療がなければ再感染する
  • 発熱を伴う強い下腹部痛は様子を見ずに受診

検査を受けることは、後ろめたいことでも、特別なことでもありません。将来の選択肢を守るための、ごく実務的な確認作業です。一度も受けたことがないという方は、この機会にご検討ください。

名古屋市緑区の徳重ウイメンズケアクリニックでは、性感染症の検査・治療についてのご相談をお受けしています。「症状はないけれど確認しておきたい」というご相談でもかまいません。ご予約・お問い合わせはこちらから、お電話でも承っています。

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