眉アートメイクの基礎知識|妊娠中・授乳中は受けられる?産婦人科医が解説
はじめに
「妊娠中でも眉アートメイクは受けられますか?」「授乳中なのですが、赤ちゃんに影響はありませんか?」──美容の話でありながら、妊娠・授乳がからむと途端に判断が難しくなるテーマです。
インターネットで調べると、美容クリニックのサイトが数多く出てきますが、妊娠中・授乳中の安全性について、産婦人科の立場から整理された情報は意外と多くありません。一方で、眉アートメイクは医療行為であり、麻酔薬を使い、皮膚に針で色素を入れる施術です。妊娠・授乳という状況を抜きにしても、知っておくべきことがあります。
この記事では、眉アートメイクがどういうものかという基本から、妊娠中・授乳中にどう考えるべきかまでを、産婦人科医の視点で整理します。結論を先に言えば、妊娠中・授乳中の施術は、一律に「できる/できない」と決まるものではなく、状況をみて個別に判断すべきものです。何をどう考えて判断するのかを、順に説明します。

眉アートメイクとは|「医療行為」であることが出発点
皮膚に色素を入れて眉を描く施術
眉アートメイクは、専用の針を用いて皮膚の浅い層(表皮からその下あたり)に色素を入れ、眉の形や色を持続的に整える施術です。時間の経過とともに少しずつ色が薄くなっていく点が、真皮の深い層に色素を入れるタトゥー(刺青)との違いとされています。
「メイク」という言葉がついていますが、化粧品を塗るのとはまったく別の行為です。皮膚に針を刺し、体内に色素を留める以上、感染や炎症、アレルギーなどのリスクが伴います。
医師または医師の指示を受けた看護師が行う
ここが最も重要な点です。アートメイクは医行為(医療行為)に該当します。厚生労働省は2023年7月、アートメイクが医行為に当たるとする見解を各都道府県に通知しています。
これが意味するのは次のことです。
- アートメイクは医師、または医師の指示のもとで看護師が行う必要がある(看護師については保健師助産師看護師法第37条の規定による)
- 医療機関以外(エステサロン等)での施術は医師法違反にあたる
なお、2020年の最高裁決定でタトゥー(刺青)の施術行為は医行為に当たらないと判断されましたが、アートメイクについては上記のとおり医行為として扱われています。「タトゥーがサロンでできるならアートメイクも」という理解は誤りです。
サロン施術のリスク
国民生活センターには、アートメイクに関する皮膚の炎症や感染、仕上がりに関するトラブルの相談が寄せられてきました。これらの多くは、医療機関であれば適切に対処できたと考えられるものです。施術後に炎症が起きたとき、色素を除去したいとなったとき、対応できるのは医療機関だけです。
料金の安さだけで選ばず、医療機関で受けることを強くおすすめします。
妊娠中・授乳中は受けられる?

結論:施術できるかは、個別の判断になります
まず前提として、妊娠中・授乳中のアートメイクは、「危険であることが証明されている」わけではありません。一方で、安全性を確かめた十分なデータがあるわけでもありません。そのため医療では、この時期に「急いで受ける理由のない処置」は慎重に扱うのが原則です。
大切なのは、妊娠中・授乳中というだけで一律に線を引くのではなく、体調・経過・授乳の状況をみて判断することです。おなかの張りがある方と経過が順調な方、産後まもない方と授乳の終わりが近い方とでは、考えるべきことが変わります。
判断のときに実際に検討している点は、次のとおりです。
① 麻酔薬(局所麻酔)の問題
眉アートメイクでは、痛みを抑えるためにリドカインなどの局所麻酔薬を使うのが一般的です。
授乳中については、リドカインは母乳中に移行するものの、国立成育医療研究センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」に含まれています。つまり授乳に関しては、麻酔薬そのものが最大の問題というわけではありません。
一方、妊娠中は、使用する薬をできるだけ最小限にするのが原則です。美容目的の施術のために薬剤を使う必要性は乏しく、この点だけでも妊娠中に急いで受ける理由はありません。
なお、施術後に授乳を一定時間空けるよう案内している施設もありますが、その必要性や時間については施設ごとに考え方が異なります。授乳中に検討する場合は、必ず事前に確認してください。
② 感染のリスク
皮膚に針で傷をつける以上、感染のリスクはゼロにはなりません。妊娠中は、感染が起きたときに使える薬(抗菌薬など)に制限がかかるため、対応の選択肢が狭まります。万一の際に打てる手が少ない状態で、急がなくてよい施術を受ける必要はない、という判断になります。
③ 肌と体調の変化
妊娠中・産後はホルモンバランスが大きく変化します。この時期は、
- 痛みを感じやすくなることがある
- 肌が敏感になり、かぶれや色素沈着などのトラブルが起きやすい
- 色の定着や仕上がりが安定しない可能性がある
といった影響が考えられます。せっかく施術を受けても、思ったとおりの仕上がりにならなかったり、後から修正が必要になったりするのは望ましくありません。
④ つわり・長時間の姿勢
施術は1回あたり1〜2時間程度、仰向けに近い姿勢で過ごすことになります。つわりの時期や、おなかが大きくなってからは、この姿勢自体が負担になります。
産婦人科だから、状況をみて判断できます
ここまで挙げた点は、いずれも「絶対に受けられない理由」ではなく、判断のときに確認すべき材料です。妊娠の経過が順調か、つわりや張りの状況はどうか、授乳をどう続けていきたいか──こうした情報があってはじめて、受けてよい時期かどうかを具体的に判断できます。
美容の専門施設では、こうした確認が難しいために「妊娠中・授乳中は一律にお断り」としているところが多いのが実情です。産婦人科であれば、妊娠・授乳の経過を把握したうえで判断できます。これが、産婦人科でアートメイクを受ける最大の利点です。
徳重ウイメンズケアクリニックの場合
当院では、妊娠中・授乳中の方については、産婦人科医・助産師が状況を確認したうえで、施術の可否を判断しています。「受けられるかどうか」からご相談いただけますので、まずはお気軽におたずねください。施術の内容は医療アートメイクのご案内をご覧ください。
なお、判断の結果として時期をずらすことをおすすめする場合もあります。とくに、つわりが強い時期、おなかが大きく長時間の姿勢が負担になる時期、産後で体調が安定していない時期は、待っていただくほうがよい仕上がりになります。急ぐ施術ではありませんので、焦らず、適切な時期に受けていただくことを大切にしています。
施術の基本を知っておく
持続期間と「消えない」わけではないこと
アートメイクの色は、おおむね1〜3年かけて少しずつ薄くなっていくとされています(個人差が大きく、肌質・体質・部位・アフターケアで変わります)。永久に残るものではない一方で、すぐに消せるものでもありません。
ここは慎重に考えたい点です。眉の流行や似合う形は年齢とともに変わりますし、消したいと思ったときの除去には、レーザー治療などの追加の処置と費用、時間がかかります。「気に入らなければ消せばいい」という前提で決めないことが大切です。
通常は2回以上に分けて行う
色の定着には個人差があるため、1回では仕上がらず、2回程度に分けて施術するのが一般的です。1回目から1.5か月〜2か月ほど空けて2回目を行い、色や形を整えていきます。
ダウンタイム(施術後の経過)
施術直後は、赤みや腫れが出ることがあります。数日はかさぶたのような状態になり、色が濃く見えたり、その後薄くなったりと変化します。この間は、施術部位をこすらない、無理にかさぶたを取らない、といったケアが必要です。
また、施術後しばらくはプール・サウナ・激しい運動・洗顔時の強い摩擦を避けるよう案内されるのが一般的です。予定を確認したうえで、余裕のある時期を選んでください。
MRI検査との関係
「アートメイクをするとMRI検査が受けられなくなる」と聞いたことがあるかもしれません。かつては酸化鉄などの金属成分を多く含む色素があり、MRI検査時に熱感や違和感が生じる可能性が指摘されていました。
現在使われている色素は金属成分が抑えられており、トラブルはまれとされています。ただし、施術を受けたことは必ずMRI検査の前に申告してください。また、施術直後は皮膚が回復していないため、緊急時を除き一定期間はMRIを避けるよう案内されることがあります。
妊娠中の方に関しては、そもそもMRIを含む検査の判断は医師が個別に行います。アートメイクの既往がある場合は、妊婦健診の際にお伝えいただくと安心です。
受けられない・注意が必要な方
次のような方は、施術を受けられない、または事前に相談が必要です。
- 妊娠中・授乳中の方(施術の可否は個別に判断。多くの美容施設では対象外)
- 施術部位に炎症・傷・皮膚疾患がある方
- ケロイド体質の方、金属アレルギー・麻酔薬アレルギーのある方
- 血が止まりにくい病気のある方、抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を服用中の方
- 糖尿病など感染しやすい状態にある方
- 半年以内に施術部位の美容医療(レーザー等)を受けた方
該当するかどうか迷う場合も、自己判断せず事前にご相談ください。
産婦人科でアートメイクを行う意味

眉アートメイクは美容クリニックで受けるもの、というイメージが強いかもしれません。産婦人科で行う意味は、妊娠・授乳という要素を含めて判断できることにあります。
「妊活中だけれど受けてよいか」「授乳が終わりかけているがいつからか」「次の妊娠を考えているがタイミングをどうするか」──こうした問いは、美容の知識だけでは答えが出ません。妊娠の経過や授乳の状況を把握したうえで、受けるべきか、待つべきか、いつなら適切かを一緒に考えられるのが、産婦人科で相談する利点です。
また、産後のお母さんにとっては、お子さん連れで来院しやすいかも現実的な条件になります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 妊活中ですが、受けても大丈夫ですか?
A. 妊娠が成立する前であれば、妊娠中の懸念(麻酔薬・感染時の薬の制限)は当てはまりません。ただし、施術は複数回に分けて行い、間隔も空くため、その途中で妊娠が判明する可能性があります。妊活中の方は、施術のスケジュールと妊活の計画を踏まえて、事前にご相談ください。妊活の進め方は妊活の始め方の記事も参考にしてください。
Q. 授乳中ですが、受けられますか?断乳する必要はありますか?
A. 授乳中だからといって、一律に受けられないわけではありません。当院では、授乳の状況や体調を確認したうえで可否を判断しています。断乳を前提としているわけではありませんので、まずはご相談ください。なお、施術後に授乳の間隔について案内する場合があります。
Q. 妊娠に気づく前に受けていました。赤ちゃんへの影響が心配です。
A. まずは落ち着いてください。妊娠中の施術を慎重に扱うのは「危険が確定しているから」ではなく「安全性のデータが十分でないため念のため」という理由です。過度に心配される必要はありませんが、施術内容(使用した麻酔薬など)を控えて、妊婦健診の際に主治医にお伝えください。施術部位に赤み・腫れ・熱感・強い痛みが出た場合は、感染の可能性があるため早めに受診してください。
Q. 痛みはどのくらいですか?
A. 麻酔を使用するため、多くの方は我慢できる範囲とされています。ただし感じ方には個人差があり、月経前や産後などホルモンの変動がある時期は痛みを感じやすくなることがあります。
Q. すっぴんでも眉がある状態になりますか?
A. デザインによりますが、日々の眉メイクの負担を減らす目的で選ばれる方が多い施術です。仕上がりの濃さや形は、カウンセリングで相談して決めます。
まとめ:自己判断せず、適切な時期を一緒に決める
- 眉アートメイクは医行為であり、医師または医師の指示を受けた看護師が医療機関で行うもの。サロンでの施術は医師法違反にあたる
- 妊娠中・授乳中の施術は、一律に決まるものではなく個別の判断。麻酔薬・感染時の薬の制限・肌や体調の変化・仕上がりの安定性をみて決める
- 危険が確定しているわけではないが、急ぐ理由のない施術は無理に進めないのが医療の原則。産婦人科なら妊娠・授乳の経過を踏まえて判断できる
- 色は1〜3年かけて薄くなるが、すぐに消せるものではない。除去には別の処置が必要
- 通常2回程度に分けて行い、ダウンタイムがある。予定に余裕のある時期を選ぶ
- MRI検査の際はアートメイクを受けたことを必ず申告する
眉のお手入れの負担が減ることは、忙しい毎日の中で確かな助けになります。だからこそ、受ける時期は自己判断せず、専門家と一緒に決めていただきたいというのが、産婦人科からのお願いです。
名古屋市緑区の徳重ウイメンズケアクリニックでは、産婦人科内で医療アートメイクを行っています。妊娠中・授乳中の方については、産婦人科医・助産師が状況を確認したうえで施術の可否を判断していますので、「受けられるかどうか」の段階からご相談いただけます。院内には保育士による託児のご用意もあり、お子さま連れでもお越しいただけます。詳しくは医療アートメイクのご案内をご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。